LOVEさぬきさんリポート LOVE SANUKISAN REPORT

食欲の秋は、讃岐路もおいしいものがあふれます。まつたけうどん、栗ご飯、あげもんやばらずしが並ぶ秋祭りのごちそう。柿やミカン、オリーブ、晩秋にはキウイの収穫も始まります。しっぽくうどんやうどんすきもおいしい季節。そんな秋の讃岐路に訪ねるのは、香川県の西端にある観音寺(かんおんじ)市です。

香川県の最西端、お金に不自由しない!?

観音寺市は、瀬戸内海の燧灘(ひうちなだ)に面し、南は讃岐山脈が控え、四国のほぼ中心に位置する香川県西部の中心都市。平成の大合併により新観音寺市となりましたが、今回は、旧観音寺市エリアをおいしいものや歴史の足跡を訪ねてめぐります。
観音寺市の偉大なるランドマークは寛永通宝の「銭形」。この砂絵は、かつてのテレビ番組「銭形平次」のタイトルバックになったこともあります。大きさは、東西122m、南北90m、周囲345m。巨大なお金が有明浜に造られています。伝説によると、寛永10年(1633年)、藩主・生駒高俊の藩内巡視を迎えるために、住民が一夜のうちに掘り上げたとか。今では、春と秋にボランティアの人々の手によって、化粧直しが行われます。この秋も10月28日(日)に予定されています。
この砂絵は、琴弾山の山頂から一望することができ、日が落ちれば、タリューム水銀灯でライトアップされます。ちなみに、この銭形を見ると、お金に不自由しないともいわれています。ここは、また「日本の夕陽百選」にも選ばれた夕陽の絶景スポットです。

観光の問い合わせ:観音寺市経済部商工観光課 電話 0875-23-3933

めずらしい一寺二霊場・モダンな本堂

銭形は琴弾山の西側にありますが、山の東側ふもとには「神恵院(じんねいん)」と「観音寺(かんのんじ)」があります。二つはともに四国霊場の札所。一つの境内に二つの札所があるのは、八十八ヵ寺のなかで唯一、ここだけです。
まず境内に入って左側に四国霊場第68番神恵院があります。古い本堂は長い石段の上にありましたが、現在は左手のモダンな造りの階段を上がったところが本堂です。ここから、美しい庭も望むことができました。

続いては、第69番札所観音寺。美しい本堂は、室町時代初期の建築といわれ、金堂とも呼ばれています。市の名前は、この寺の名が由来ですが、そのはじまりは大宝3年(703年)、神宮寺(今の観音寺)住職が琴弾八幡宮を鎮座し、大同2年(807年)弘法大師がその神宮寺に聖観音像を安置したことによります。そこで、観音寺と呼ぶようになり、やがて、この寺の名前が村、町、市の名前となったのです。本堂の傍らは、境内にある唯一のお休み処「梧桐庵(ごどうあん)」。精進うどんや甘酒などをいただくことができ、お土産も並んでいます。また、お茶の無料接待があります。

問い合わせ:梧桐庵 電話 0875-25-6022

一夜庵からお金のミュージアム

観音寺・神恵院から1kmほど北西に「興昌寺(こうしょうじ)」があり、ここには俳諧の祖・山崎宗鑑が享禄元年(1528年)に創建し、天文22年(1553年)10月2日にこの庵で没するまで過ごした「一夜庵」があります。趣のある美しい屋根は、山崎宗鑑誕生の地である滋賀県草津市民の皆さんから寄贈された琵琶湖の葦で葺かれたという説明がありました。
この近くには、黒松の根が不思議な造形を見せる「根上り松」もあります。また、ここから海の方へ向かえば、その数5万本といわれる有明浜の松原が広がっています。この「琴弾公園」には、公園の名前の由来となった「琴弾八幡宮」や、道の駅には銭形にちなんでお金がテーマという珍しいミュージアム「世界のコイン館」もあります。

問い合わせ:世界のコイン館 電話0875-23-0055

おだやかな秋の日に

観音寺市街を歩けば、和菓子も洋菓子もおいしい店が幾つか点在しています。その代表として、銭形をデザインした銘菓「観音寺」で有名な「白栄堂」さんを訪ねます。100年を超える歴史ある白栄堂ですが、店舗は、和紙の造形作家であり、空間デザイナーの森田さん(香川県在住)が手がけたもので一見の価値有り。喫茶コーナーもあるので、ひとときゆっくり過ごしましょう。
おみやげにおすすめは、銘菓「観音寺」や「一夜庵」、「銭形もなか」や「銭形せんべい」など、観音寺ゆかりの銘菓たち。観音寺の真心をそのままお菓子にしたような、ほっこりとやさしい味わい。お店もお菓子も、穏やかな秋の日のように心安らぎます。
市内には柳町本店のほか、駅近くの栄町支店、吉岡町支店があります。

問い合わせ:白栄堂柳町本店 電話 0875-25-3888

秋の海老煎はいかが

観音寺市の前に広がる燧灘は、味わい深い小エビがとれることで知られています。そこで市内には、「えびせんべい」の名店が幾つかありますが、そのなかで全国にその名が知られる「志満秀」さんを訪れました。昭和25年(1950年)に島秀水産として創業し、昭和29年からエビなどの水産珍味の加工をはじめた「志満秀」は、今ではえびせんべいの有名メーカーとして、全国の百貨店や量販店、専門店などにも商品が並んでいます。

自然素材にこだわり、風味豊かで丸ごと食べることができる赤小エビや高級品の車エビをはじめ、ミネラル豊富な高級甘味の和三盆、自然精製された天然の塩、麦飯石で精製したミネラルウォーターなど、吟味を重ねた厳選素材を使っています。この素材を熟練の技でじっくり焼き上げているのです。サクッとやさしい歯ざわりがたまらない「えびせんべい」をはじめ、「えび姿焼」、「えび風流」、「海老開焼」などなど、美しい商品群とその詰め合わせが知られていますが、実は風雅な季節商品もあります。9月28日からは松茸も入った「秋の海老煎」。10月26日からは健康にも考慮した「納豆えび煎」も販売されます。秋限定のえびせんべい、味わってみませんか。

問い合わせ:株式会社志満秀 電話 0120-555-942

エビそのもの「あいむす焼」

今度は、香ばしい風が路地にあふれている「満久屋 豊浦商店」を訪ねます。 ここにある「あいむす焼」は、見た目はえびせんと同じですが、何も加えずにエ ビそのものだけを焼き上げています。燧灘でとれた新鮮な生エビ(アカエビ、サルエビ、トラエビ、マジャコなど)を材料にして、一つ一つ殻を手でむき、背わたを丁寧にとって作ります。そのむき身を鉄板の上にのせ、上から鉄板でぎゅっと焼き上げるとできあがり。当然、無添加、無混合物ですが、これが、何とも言えない味があるのです。
満久屋 豊浦商店さんは、明治10年(1877年)の創業。今年で130年にもなります。港 のすぐ近くであったので、「あいむす焼」創業以前の300年ほど前からは旅籠や雑貨を商っていたそうです。そこで燧灘でとれた小魚やえびで練り物のかまぼこなどを商っていましたが、これは日持ちがしないので、どうにか日持ちがするようにと、エビの身だけを蒸し焼きにする「相蒸焼」が生み出されたとか。とにかくエビそのものなので、これをマヨネーズ醤油につけても絶品。クリームチーズともよくあい、パーティーのカナッペにもなります。また、すましに入れてもよく、これからの季節は鍋物の具にもおすすめです。

問い合わせ:満久屋 豊浦商店 電話0120-3579-39

かまぼこ&ちっか

観音寺市には、かまぼこなどの練り製品を扱う店舗も数多くあります。今度は、テレビのグルメ番組でも紹介された「仁加屋」さんを訪ねます。
「仁加屋」さんは、なつかしの町並みがあった当時、映画「青春デンデケデケデケ」のロケ地ともなりました。地元出身の直木賞作家芦原すなおさんの小説が大林監督の手で映画化される際に、「ちっかや(ちくわ屋)の岡下 功の家」となっていたのです。しかし、その後の道路拡張にともない全面改装。でも、あの温かい人情は変わらず、4代目さんと息子さんがやさしい笑顔で迎えてくれます。
「仁加屋」さんを一躍有名にしたのは、テレビ番組「新・どっちの料理ショー」。このなかで、「銭形ちくわ」が登場すると、たちまち電話の嵐。2週間ほどはまさに台風のようだったそうです。このちくわは、本当に見事。テレビでは一本丸揚げにしてさぬきうどんに乗せていましたが、なんといっても生で食しておいしいちくわです。そして、鍋に入れてよし、おでんにしてよし、いよいよその練り製品の本格的シーズンが到来します。

問い合わせ:株式会社仁加屋 電話 0875-25-3879

秋祭りに甘酒

観音寺市には、おいしい甘酒も伝わっています。永禄元年(1558年)、天霧城主香川之景が室本地区にのみ、こうじ製造販売と特権を認めておいしい甘酒が作られるようになりました。室本町にある皇太子神社は、全国でもめずらしい麹(こうじ)の神様として知られています。その室本町にある「入江麹製造所」を訪ねました。観音寺周辺では、その昔から人が集まると言えば、よく甘酒がふるまわれ、祝い事にはなくてはならないものだったそうです。特に秋祭りでは、欠かせない飲み物で、親戚の家に甘酒を持って「秋祭りがあるので来てください」とお祭りの案内に行くのが習わしだったとか。
この「室本こうじ」は、古法作り500年の伝統に、入江麹製造所が生み出した独特の風味をもった酵母菌をもとに、自然発酵させて作られた手作り麹です。甘酒はテレビの健康番組でもその良さが言われていましたが、この麹で作った甘酒は特に天然ぶどう糖、生きた乳酸菌、オリゴ糖、各種ビタミンなどが多量に含まれているそうです。
「入江麹製造所」では、生活習慣の変化にともない、12年前からペットボトルで甘酒を販売するようになりました。市内の各スーパーや産直でも出会える甘酒は、ほどよい甘さで世代を超えて愛されています。

問い合わせ:入江麹製造所 電話 0875-25-1932

神様のお布団を刺繍する

観音寺市の秋に盛り上がるのは「ちょうさ祭」。琴弾八幡宮の秋の大祭(平成19年は10月19日・20日・21日)には、超巨大な9 台の太鼓台が繰り出します。こうした「ちょうさ祭」で豪華な太鼓台を飾る、いわば神様の布団に刺繍をほどこしている職人さんを訪ねました。観音寺市街地で、百年以上の伝統がある「金糸銀糸装飾刺繍」を継いだ4代目の高木敏郎さんです。「孤独な作業ですが、やはり手本は3代目の父や祖父。父が50代の頃の仕事を見ると今でも感心します。緻密さが違うんです」と謙虚に語る高木さんは、仕事を始めて32年。熟練の技を持つ職人として知られています。高木家が代々行ってきた装飾刺繍は、未だ現役で活躍し、修理の依頼が来ます。「何でも新調するのが流行のようですが、丁寧な仕事をしていれば、何度でも修理ができます」と語り、今も30年ほど前、自分が駆け出しのころに父の仕事を手伝った作品を修理中だそうです。完成したものは、また、秋祭りの晴れ舞台で、まばゆいばかりに輝くことでしょう。

問い合わせ:高木さん 電話 0875-24-1169

手まりは草木染めの木綿糸

観音寺市で長く伝わり、今、広められている伝統工芸に「讃岐かがりてまり」があります。江戸時代には、讃岐三白の一つであった綿(後は塩と砂糖)から作る木綿糸を草木染めにして作られた手まりは、女性のあこがれ高級品でした。それが、いつしか観音寺に二人だけしか作れないというまでになったころ、栗林公園の民芸館長も務められた荒木計雄さんが保存会を作り、その技は保たれることになりました。

荒木さんは、「民芸運動」を興し、観音寺市の自宅に民芸館まで造りました。また、昔のように草木染めで、かがりてまりを作りたいと努力を続け、その思いを奥様、そしてお嫁さんの荒木永子さんが受け継ぎました。結婚してから学び始めたという永子さんは高松市在住ですが、今では伝統工芸士として、観音寺市でも教室を開いています。手作りキットに加え、匂い袋の入った香り玉や携帯ストラップなど、永子さんらしい作品も次々と生まれています。

問い合わせ:荒木さん 電話 087-821-7131

昔は茶店、今はうどん店

観音寺市の秋に盛り上がるのは「ちょうさ祭」。琴弾八幡宮の秋の大祭(平成19年は10月19日・20日・21日)には、超巨大な9 台の太鼓台が繰り出します。こうした「ちょうさ祭」で豪華な太鼓台を飾る、いわばその昔、観音寺から本山寺のちょうど中間点あたりの山裾に、お遍路さん相手の茶店があったそうです。その旧道が、川の拡幅工事で立ち退きということになり、隣り合っておいしいお餅を作っていた最後の2軒が、場所を変えて営業することになりました。国道11号沿いにある「かなくま餅」と、もとの場所に近い県道49号線沿いにある「かなくま餅福田」です。

さぬきの夢2000こだわり店

国道11号沿いにある「かなくま餅」は、香川県で作られている小麦「さぬきの夢2000」を使ったこだわり店。店名にあるとおり餅にもこだわっており、毎朝つきたての餅は、100%香川県産もち米を使用し、そのままはもちろん、煮ても焼いてもおいしく食べることができます。できたてのお餅と夢2000のうどんを食べるには、たくさんの野菜と鶏肉が入った「力うどん」がおすすめ。店内には、うどんだけでなく、地元でとれた旬の野菜や魚を使った昔ながらのお総菜も並び、お昼時は地元客でにぎわっています。

問い合わせ:かなくま餅 電話 0875-25-3044

さぬき夢の味コラボ

県道49号線沿いにある「かなくま餅福田」も餅が有名な店。ショーケースの中にあるおもちやおはぎもちも人気で売り切れ続出。朝6時には店を開き商品を並べ、うどん店は10時くらいから開店するそうです。ここには、ほかにはないメニューがあります。まず「エビおこわ」。小豆のかわりに国産エビを粉にして炊きあげるというごはん。エビのうまみと美しい色が感動のごはん。そして、もう一つが「アン雑煮うどん」。讃岐の雑煮は白みそ仕立てで餡餅を入れることで有名ですが、これは普通のだしのうどんに香ばしく焼いた餡餅が入っています。餅好きにもうどん好きにもたまらない逸品。アンが苦手な人には白餅入りの「雑煮うどん」があります。お遍路さんに人気のうどんとお餅です。

問い合わせ:かなくま餅福田 電話 0875-25-3421

ふるさとの味づくり

財田川のほど近く三豊市に近い吉岡町には、四国の素材を生かした漬け物で有名な「七宝産業株式会社」があります。1920年創業のここには味わい深い建物があり、聞けば旧観音寺駅を移転したものだそうです。観音寺の山号は七宝山といい、町の北東には七宝山系があります。弘法大師が七つの宝を埋めたという伝説が残る山の名前は、ラッキー7にも通じ、幸せを招く社名です。

自慢の商品には、さわやかなリンゴ風味の「あさづけなす」、たまり醤油づけの「たまりきゅうり」、梅酢風味のうす味仕上げ「梅酢沢庵」、最高級の梅干し「南高梅」、そして七種類の野菜を漬けた「七宝漬(しっぽうづけ)」などがあり、初秋の人気商品としては、水の都・西条市(愛媛県)の絹皮ナスを素材としたサラダの素材にもなる、やわらかくフルーティーな「絹皮なす」。冬に向けては、徳島産のまん丸いカブラを使った「玉カブラ」も喜ばれています。そして、人気は「一豊の妻」と名付けられた漬け物のギフトセット。横浜三越や八王子そごう、池袋西武、多摩川高島屋などのデパートでも求めることができ、お歳暮などにも大好評。実は、現社長夫人は、山内一豊の妻、千代さんとは遠戚関係になるそうです。こちらは、食育などにも積極的に関わり、おいしい漬け物と文化を楽しむ「千代の会」を結成しています。

問い合わせ:七宝産業株式会社 電話 0875-25-1161

「さぬきよいまい」でさぬきでよいまい

さて、今年、話題のお酒は、香川県と香川大学、香川県酒造協同組合、JA香川県が力を合わせて育てた、香川県のオリジナル酒米「さぬきよいまい」。この名前は、醸造に適した「良い米(よいまい)」で造ったおいしいお酒で、気持ちよく酔ってくださいという讃岐弁の「酔いまい」の意味を込めて命名されたそうです。今年の春に初の新酒が販売されると、「フルーティーな飲み口で、どんな料理にも合う」と大好評なのです。

そこで、この「さぬきよいまい」で、話題のお酒を造っている「川鶴酒造」さんを訪ねました。観音寺市から県道5号線(観音寺池田線)を郊外に向かうと、道沿いに国の登録有形文化財にも指定されているという立派な酒蔵が見えてきます。明治24年(1891年)に、300石余の清酒醸造に着手したのがはじまり。財田川に舞い降りた鶴の姿を夢に見て「川鶴」と名付けられたそうです。「川の流れの如く素直な気持ちで呑み手に感動を」という心で116年、酒一筋に歩んできたという蔵人たちは、原料にこだわり、技の追求にこだわり、そして讃岐の酒造りにこだわってきました。

その蔵人たちが、この春に自信を持って送り出したのが「初垂れ雫」。「さぬきよいまい」で誕生した原酒を最初に絞った霞酒。そして、夏には「中垂れ雫」を発売。この秋は、最後に絞る味わい深い「末垂れ雫」が発売されます。また、観音寺の寛永通宝にちなんだ限定販売の「琴弾正宗」は、味が良いのはもちろん、ラベルやビンが創業当時の銘柄を復活させているので、ぜひとも手に入れたいと全国から注目されています。
ここは、かつての米蔵を改修した資料館(平日のみ開館)があり、古い酒造りの道具なども見ることができます。遊鶴館のギャラリーせらびい(毎月1日~5日開館、1月は4日~)では、県内の作家さんなどの手作り雑貨やアンティークなどを展示即売しています。

問い合わせ:川鶴酒造株式会社 電話 0875-25-0001

観音寺まちあるきチケット

こうした観音寺のまちを、食べ歩きでめぐるコースがあります。Aコースは、500円のチケットを買って、指定されたお店を巡って食べ歩きます。各店に定休日や営業時間があるので、ちゃんとチェックしましょう。Bコースは予約制でチケット代は1000円。おばちゃんたちが務めるエプロンガイドさんがまちを案内してくれます。もちろん、おいしいお店も。チケットは、世界のコイン館、大正橋プラザ(駅前観光案内所)、観音寺市商工観光課にあります。

問い合わせ・予約申し込み:観音寺市経済部商工観光課 電話 0875-23-3933