LOVEさぬきさんリポート LOVE SANUKISAN REPORT

かがわの夏は、花火の競演も迫力の「さぬき高松まつり(8月12日~14日)」をはじめ、ちょうさが乱舞する「さかいで大橋まつり(8月3日~5日)」、ダンスパフォーマンスも見応えがある「まるがめ婆娑羅まつり(8月25日・26日)」、宝さがしも楽しい「銭形まつり(7月14日~16日)」、巨大竜に息を飲む「仁尾竜まつり(8月4日)」などなど、一目見ていただきたい夏祭りが目白押し。そして、2ヶ月にわたり、ロマンティックな石あかりをともして夏の宵を楽しむという「むれ源平石あかりロード(7月29日~9月22日)」も開催されます。そこで、今回は、石あかりのまち「高松市牟礼町」を訪ねます。(日にちは今年の開催予定日です。)

庵治石の歴史を刻む古戦場

高松市牟礼町は、東は志度湾、西は屋島湾に接し、まちの中ほどに独特の形をした五剣山がそびえ、緑の高台から瀬戸内海をのぞめます。その昔から庵治石の産地として知られ、石の文化が色濃く残るまち。また、源平屋島合戦の舞台でもあり、古戦場の史跡があちこちに残っています。この牟礼町は、2006年1月に高松市と合併し、現在は高松市牟礼町となりました。

観光の問い合わせ先
高松市観光課 電話 087-839-2416

花崗岩のダイヤモンド

この牟礼町が全国、いや全世界に誇るのが「庵治石」。結晶が極めて小さく、緻密でほかの花崗岩と比べて硬いのが特徴です。ですから、二百年は彫られた字が崩れない、変色しない、艶(つや)が失われないといわれています。また最大の特徴は、よく磨いた石の表面に黒雲母が緻密に入り、まだらな地模様に濃淡が出る、「斑(ふ)」または「ぼたん」と呼ばれる現象。これは、世界中の石材の中でも「庵治石」だけといわれています。この希少性、特質から、石材の単価としては世界一ともいわれているのです。つまり、別名「花崗岩のダイヤモンド」なのです。

この美しい石に魅せられた彫刻家はたくさんいます。20世紀を代表する世界的な彫刻家、イサム・ノグチも「庵治石」を愛し、この地にアトリエを構えました。そこは、現在、「イサム・ノグチ庭園美術館(火・木・土のみ開館。往復はがきで予約が必要。電話 087-870-1500)」となっています。また、まちのあちこちに、「庵治石」の石彫作品が見られます。そして、多くの石材店が軒を並べる石の里、牟礼町です。

千年の庵治石の歴史を物語る

屋島や牟礼の町を望む高台に広がるのは「石匠の里公園」。この一画に庵治石の歴史や技を伝える「石の民俗資料館」があります。大正末期から昭和初期にかけての丁場や作業場などの風景を再現したジオラマがあり、わかりやすく庵治石の歴史を見ることができます。また、1000点を超える石工道具も収納・展示されていますので、石を学ぶには絶好の場所です。天然石取り放題の“ストーンハンティング”や石に彩色する“石 de ペイント”といった体験教室もあり、特定日には石の工作教室も開かれます。夏休みにもぜひお越しください。
周囲は石の彫刻作品も置かれている「石匠の里公園」。緑の芝部が広がり、眺めが素晴らしく、遊具もあるので、元気に遊ぶ子どもたちの姿をよく見かけます。資料館の裏手にある展望台は、源平の古戦場を見渡す絶景のポイント。漫画家の植田まさしさんが描いた那須与一も待っています。

ほのぼのケーブルカー

「石匠の里公園」の北には、牟礼のランドマークといえる「五剣山(ごけんざん)」がそびえています。その昔は、名前のように5つの峰がとがっていたのですが、うち一つは1707年(宝永4年)の大地震で崩壊してしまい、現在は4つの峰が並んでいます。この峰のふもとに四国霊場第85番札所「八栗寺」があります。この寺に向かう表参道は、車が入れませんので、広い駐車場に車を入れて、徒歩またはケーブルカーで八栗寺に向かうことになります。歩きのお遍路さん以外は、大半が利用するケーブルカーは、毎時間15分ごとに運行され、山上駅までは、季節の花々や緑に包まれてわずか4分。屋島や市街の遠望も楽しめます。途中で2台のケーブルカーがすれ違うのも楽しく、車体も車内もどこか懐かしく、子ども時代のときめきがよみがえってくるようです。料金表をよく見ると、下りの料金が登りより安くなっています。

さて、登山口駅にも山上駅にも小さな売店があり、山上駅ではお茶のお接待もしてくれますので、香川の物産をぜひゆっくりとごらんください。ちなみに登山口駅で人気のお土産ベスト3は、「巻きせんべい(巡礼祈願巻)」、「さぬきあげうどん」、「野菜食ごぼうせんべい」です。

八栗ケーブルカー 電話 087-845-2218
http://www.shikoku-cable.co.jp/yakuri/index.htm

五本の剣と八つの栗?

ケーブルカーで山上駅に到着すると、五剣山がぐっと迫って見えます。駅からわずか200m、平坦な道を歩いて八栗寺に到着です。創建は829年(天長6年)。寺伝によると、弘法大師が唐に行く前に五剣山に登り、八つの栗を埋めて旅の無事を祈りました。帰国後、再び訪れて修行を行っていると、天から五本の剣が降り、ご神託があったといいます。また八つの栗も無事に成長していたので、寺を建立し「五剣山八栗寺(ごけんざんやくりじ)」と命名したということです。ここは、四国霊場の札所の中では珍しい「歓喜天」さんをまつり、「八栗の聖天(しょうてん)さん」とも呼ばれています。商売繁盛・夫婦円満にも御利益があるといわれ、毎月、1日と16日が縁日となります。

名物ぶっかけうどん

ケーブルの登山口駅から参道(県道146号線)を下ったところに、さぬきうどんの名店「うどん本陣山田家」があります。その昔は大庄屋、銘酒の醸造元であったという、立派な屋敷の門構えと庭が迎えてくれます。その上、絶品のさぬきうどんを、例えば、ぶっかけうどん270円、釜ぶっかけ530円(写真)という値段で味わうことができるのです。座敷で優雅に天ぷらうどん、庭を愛でながらざるうどん、さまざまな席と味があり、何度行ってもあきない山田家です。

店主の山田潔さんの伯父さんにあたるのが和田邦坊画伯。商標やデザイン、店舗づくりからメニューまで画伯の指導によるもので、「名物 ぶっかけうどん」も名付けてくれたとか。今では商標登録をとった「釜ぶっかけ」、夏のおすすめ「ざるぶっかけ」が看板メニューとなっています。うどんのほかにも、おでんや押し寿司、天つゆもちゃんとついてくる天ぷらなどのファンも多くいます。

うどん本陣山田家 電話 フリーダイヤル0120-04-6522/ 087-845-6522
http://www.yamada-ya.com/top.htm

合格祈願の栗山堂

「うどん本陣山田家」からさらに参道を下れば、道から少し入ったところに「栗山記念館」があります。柴野 栗山(しばの りつざん)は、この地に生まれた江戸時代の学者。寛政三博士の一人に数えられ、日本教育界の父とも崇敬されています。館内の栗山堂には、木像が安置され、今では受験の神様と慕われ、お守りを買い求める人が後を絶ちません。

栗山記念館 電話 087-845-5996

石匠たちの協同組合

参道を下り、石材店が軒を並べるまちなかにやってきました。墓石や灯籠(とうろう)、見上げるばかりの仏像や五重塔も見えます。こうした石材店のみなさんが作った組合が「讃岐石材加工協同組合」。牟礼の地で石材業を営む方々を中心に、昭和23年に「牟礼石材加工企業組合」として出発し、来年で60年。現在111の石材関係者が加入しています。組合の仕事は、協同で仕入れ、受注、販売などを行います。ですから、「庵治石の製品がほしい」、「墓石を注文したい」、「オリジナルデザインで石のオブジェや家具を作りたい」、「石あかりがほしい」など、何でも相談に乗ってくれます。
「世界一の庵治石の産地であるというだけでなく、世界に誇る石の技術を重ね、かつては世界中の石がこの牟礼に集まっていました。ここには世界中の石を知り尽くした石材のプロ、石材加工の名人たちが大勢いるのです。石は自然の物ですので、同じ場所から出た石でも、模様や質が微妙に違います。石の世界は広く深いものがあります。一度造った石製品は半永久的に残ります。信頼できるプロに任せ、何十年後も心から良かったと思えるものに出会ってください。

貴重な庵治石は、高い、手に入らないというイメージが強く、もう採石されていないというようなデマまで飛びます。しかし、本物の庵治石は、香川県牟礼でしっかりと切り出され、さまざまな物に加工されています。貴重な石ですので、破材などを使って、小さなオブジェも作られています。まずは、手頃な小物から、庵治石を身近に置いて、その良さにふれてください。また、石のおもしろさ、石材の楽しさにも、牟礼でふれあっていただけたらと思います」と笹尾事務局長が語ってくれました 。

讃岐石材加工協同組合 電話087-845-2446 http://www.chuokai-kagawa.or.jp/sekizai/

石あかりに癒されて

石の良さにふれあってほしいと始まったのが「むれ源平石あかりロード」。今年は、7月29日(日)~9月22日(土)までの開催で、コトデン八栗駅から続く旧庵治街道には、さまざまなデザインの「石あかり」が灯されます。点灯は夕暮れから午後10時ころまで。ほのかにともる「石あかり」が道しるべとなって、ロマンチックな時が流れていきます。
期間中の土曜日には、多彩なイベントが開催されます。「石あかり月あかりライブ」として、コンサートやフラメンコ、活弁での映画も予定しています。また、「石あかりカフェ」「源平屋台」といったおいしい出店もあり、今年は、さらにパワーアップして開催の予定。この夏、一押しの「むれ源平石あかりロード」です。

問い合わせ:讃岐石材加工協同組合 電話087-845-2446
http://www.genpei.org/index.html

体にやさしいモーニング

「株式会社八栗」さんの魚を使って、モーニングを出しているという喫茶店があります。国道11号沿いにある「珈風香(かふか)」さん。和風モーニングは、ごはんは有機米、ダイコンなどの野菜もふんだんに使い、「株式会社八栗」さんの鯛の切り身がついてきます。この健康的なメニューをはじめ、モーニングは午後2時まで。つまり、ランチとしても味わうことができるのです。写真専門のギャラリーでもあり、取材の日には瀬戸大橋や善通寺など、香川県内のベストスポットの写真を見ることもできました。

珈風香 電話 087-845-2579

はかる歴史が新技術を生んだ

続いては少し足を伸ばし、国道11号の南にある「鎌長製衡株式会社」を訪ねました。
1880年に創業し、1947年に「鎌長製衡株式会社」を設立、一貫してはかりや計量システムの専門メーカーとして歩んできました。香川県では、“はかり”といえば「鎌長さん」といわれてきましたが、現在はどんなものを作っているのでしょうか?
一言で“はかり”といっても、今ではさまざまな機能を持ったものがあります。もちろん昔からある「ふんどう(Weight)」も1mgから10tまで作っていますが、これはごく一部。たとえば、産業はかりでは、トラックに積み荷を載せたまま重さをはかることのできる「トラックスケール」や、飼料の受け入れや食品の配合などに使われる「ホッパースケール」、粉体や液体などの原料を所定の重量に計量するとともに容器に充填する「パッカースケール」など、あらゆる業界で活躍する様々な製品を生み出しています。
なかでも「デジタル革命」で業界に新風を巻き起こした次世代型のデジタルロードセル式のトラックスケールは好評で、新技術を導入した商品開発で絶えず業界を牽引しています。
またこれらの技術をいかし、特殊なニッチ市場では90%以上のシェアを誇る商品が数多くあります。ちなみにビールホップの配合設備は世界で初めて手がけ、今では20数種類を有しています。また、もみがらを圧縮梱包して、家畜の寝床にする「もみ減くん」も、資源の有効利用として注目されています。
環境機器の関連製品では、ペットボトルやカンの圧縮機、ガラスの破砕機などのリサイクル機器やリサイクルプラントにも関わり、平成17年にはプラスチック製包装容器を減容し圧縮梱包する製品が環境の負荷を低減する商品であることから香川県環境配慮モデル事業所にも選ばれました。ISO9001、14001も取得し環境に配慮した高性能・高品質のユニークな製品を社会に供給し適正な計量の確保と循環型社会形成の役割の一端を担っています。
長年のノウハウを生かし、時代を先取りする新しい技やシステムを生み出している「鎌長さん」は、今や世界各国へ製品を納入しています。

鎌長製衡株式会社 電話 087-845-1111
http://www.kamacho.co.jp

木の神髄を生かす家具

国道11号沿いを東に進めば、牟礼町大町に上質な家具づくりで有名な「桜製作所」があります。1948年にモダンオリジナル家具会社として出発した「サクラ製作所」は、彫刻家の流政之氏と出会い「讃岐民具連」に参加。世界的木工作家ジョージ・ナカシマ氏の指導で、「木の心」を読み取る手仕事の家具づくりを進めました。そして、ジョージ・ナカシマ家具のライセンス生産を手がけるようにもなったのです。その後、2002年には高松市内に、2004年には東京・銀座にショップをオープンしています。
桜製作所が得意とするのは、無垢材を生かしたオーダー家具、造り付け家具を卓越した技術で作り上げています。また、店舗やマンション、住宅の内装などトータルでの空間デザインや設計、施工も手がけ、大型建具などの特注品にも応じています。桜製作所で求めた家具は、修理をすることができるので、一生ものどころか世代を超えて愛用することができます。世界のVIPにも愛される木の神髄を生かす家具は、ここ牟礼で生まれています。

桜製作所 電話 087-845-2828 http://www.sakurashop.co.jp/index.htm

与力屋敷でうどんと会席

国指定登録有形文化財の与力屋敷で“さぬきうどん”をいただくことができる「郷屋敷」を訪ねます。国道11号の南を通る県道272号線(高松志度線)沿いに、豪壮な屋敷が見えてきます。およそ二百年の歴史がある建物や庭は、趣と格式がある料亭といった雰囲気ですが、手作りの土産物を置く蔵や茶房「古遊楽」もあり、敷居は決して高くありません。

前庭を通り立派な玄関を上がると、お料理への期待が高まります。幾つもの座敷や椅子席の部屋もあり、予約をすれば個室を使うこともできます。本格的な会席やうどんすきで、讃岐の美食をゆっくりと味わうこともでき、また手軽な値段のメニューも多彩です。お昼にはランチ用の会席もあり、2ヶ月ごとにメニューが変わる「華やぎ」(1800円)は一日限定20食で、造り・煮物・焼物・ご飯物・デザートまで付いてきます。その上、プラス200円で釜揚げまたはざるうどんも味わえます。季節の旬を味わうのなら「暦会席」(2625円~)がおすすめ。
JRのフルムーンのポスターにも登場した「郷屋敷」。牟礼の里、自慢の味わい深い屋敷です。

郷屋敷 電話 087-845-9211
http://www.goyashiki.co.jp/index.html

この夏、新「道の駅」オープン

8月上旬にオープン予定の道の駅「源平の里むれ」は、国道11号沿い房前(ふさざき)にあります。ここは、遍路道が通る場所でもあるので「遍路休憩所」も設置され、コトデン電車や庵治石で造られたモニュメントを鑑賞することもできます。牟礼の地の名物や特産品もたくさん置かれる予定ですので、ぜひお立ち寄りください。

オープン前問い合わせ先 東交バス 電話 087-821-1118(担当:難波駅長)
http://www.skr.mlit.go.jp/road/rstation/station/muret.html