LOVEさぬきさんリポート LOVE SANUKISAN REPORT

瀬戸内国際芸術祭はじまる

世界の注目を集める「瀬戸内国際芸術祭」は、7月19日(海の日)から10月31日(日曜日)までの105日間、瀬戸内海の7つの島と高松港周辺を舞台に開催されます。
この7つの島とは、高松市の沖合に浮かぶ女木島(鬼ヶ島)、男木島、大島。さらに香川県最大の島、オリーブアイランド・小豆島、その沖合に浮かぶ豊島(てしま)、岡山県に属する犬島、そして、アートの島として名高い直島です。
今回はその中でも瀬戸内国際芸術祭の中心となる「直島」を訪ね、個性的な土産物やショップなどをご紹介します。

心やさしき人々の島

高松港からフェリーに乗って約50分、高松市の北方13kmに浮かぶ直島は、岡山と香川に挟まれた備讃瀬戸にあります。
正確には27の群島の中心地で、その名は保元の乱で敗れた崇徳上皇が、島民の純真素朴さに心打たれ、名付けたと伝えられています。その伝説通り、心やさしき人々が迎える島の玄関口は海の駅「なおしま」。高松港や岡山県宇野港からのフェリーや島内を巡る町営バスが発着します。
このバスは島内各所にバス停があり、1回の乗車は100円(降りるときに支払う)という手軽さです。(美術館エリアへは「つつじ荘」まで町営バスが運行し、後はベネッセの無料シャトルバスに乗り換えての移動です。)

直島観光のお問合せ NPO法人直島町観光協会 電話 087-892-2299
定期航路のお問合せ 四国汽船(株)宮浦営業所電話 087-892-3104

海の駅「なおしま」

海の駅「なおしま」には、乗船券の販売窓口、観光協会の事務所やまちの案内所、本格的なラテや軽食が味わえる「カフェおうぎや」、レンタサイクル(台数限定)もあります。
島のお土産がずらっと並ぶのは「直島楽市」(9時~18時)。特に目立つのは、島内で生み出されている金(ゴールド)のコーナーや、直島特産の天日塩、この塩などを使ったスイーツ、オリーブ製品といった小豆島などのコーナーです。また島で収穫されたお米の販売、塩アイスや瀬戸内海鮮万能酢や焼き肉のたれも大好評で、さまざまな島の味に出合うことができます。

レンタサイクルの問い合わせ カフェおうぎや 電話 087-892-3642

島のスイーツ

この海の駅でも置かれている島の銘菓がイワタコンフェクトの和菓子の数々。島で製錬される銅にちなんで、その和名がつけられた「あかがね饅頭」。甘いあんこを、さくっと上品な皮で包んだ「直島女文楽」は、直島独特という女性による文楽一座にちなんだ最中(もなか)。
また、「恋わすれ貝」は、崇徳上皇が詠まれた和歌にちなみ貝の形をかたどった最中で、その美しい姿や味が大人気です。

イワタコンフェクト 電話 087-892-3179

おやじの海でとれた極上「海苔(のり)」

海の駅のカフェも営業する扇屋さん(立石水産)は代々、海苔の養殖を手がけて来ました。もちろん、今でも本職は養殖業。瀬戸内海とはいえ真冬は極寒の海に入り、震えながら海苔の養殖に精を出しているのです。そうしてとれた海苔を今度は、自分の手でおいしい製品に加工、海の駅でも販売しています。「自分で養殖しているので、とれる中でも一番海苔という極上のものを使っています。食べ比べてもらっても自信がありますよ」というご主人。その言葉通り、パリパリの食感で滋味あふれる味。海の香りが心地よく広がります。「おやじの海」という味付け海苔や「しおのり」もおすすめ。 また、金箔入りの海苔の佃煮もあります。ちなみに、演歌の「おやじの海」は、直島製錬所に勤務していた村木賢吉さんが同僚の直島出身の佐義達雄さんと意気投合し、佐義さんの作詞作曲、村木さんの歌でヒットしたもの。現在、パオ(テント型宿泊施設)もある海の家「つつじ荘」の前に大きな石碑があり、歌も流れてきます。 扇屋さんは積浦で「民宿おうぎ屋」も経営し、7月上旬には新館やフレンチ風居酒屋、そして貸ギャラリーをオープンの予定。瀬戸内国際芸術祭に合わせて、地元のアーチストを中心に若手芸術家の方にも、世界からのお客様に向けて作品を大いにアピールしてほしいとのことでした。

民宿おうぎ屋 電話 087-892-3642

お日様のめぐみ「ソラシオ」

製塩土器が発掘されるほど、直島一帯では太古から塩づくりが盛んに行われてきました。その後も天領(幕府の直轄地)であった直島には、御恵浜(ミエハマ)などに塩田が造られ、大阪方面まで出荷されていたのです。その塩田も時代の流れの中ですっかり姿を消してしまいましたが、2009年10月に再び島の製塩プラントが完成。
島の沖合からポンプで海水をくみ上げ、循環させながら塩分濃度を上昇させるというもので、濃縮した海水の水分を蒸発させるのに、火を使わず太陽熱だけで結晶化させるソーラーシステムとなっています。まさに太陽光を利用した環境に優しいエコシステム。できあがった塩も、とてもやさしくまろやか。一般の食塩と比べミネラルが豊富で、約5倍のカルシウムを含んでいるそうです。

そうして生まれた塩は、「直島太陽塩SOLASHIO(ソラシオ)」というブランド名で販売され、瞬く間に海の駅のヒット商品になりました。また、この塩のまろやかさを生かして、塩アイスや塩チョコレート、塩大福、羊羹(ようかん)やドーナツまで誕生しています。
この製塩プラントは直島つり公園の一角にあり、中では手作業で貴重な塩が丁寧に集められています。曇りの日が続くと、生産が追いつかない状況で、うれしい悲鳴を上げているとのことでした。今後も、どんどん人気がアップしそうな直島の「SOLASHIO(ソラシオ)」。新鮮なお刺身にも、魚の天ぷらにも、とってもよく合うお塩です。

鯛の浜焼きもある「直島つり公園」

続いては海の駅からバスに乗り、「直島つり公園」に向かいます。つり公園のバス停は便数が少ないので、ふるさと海の家「つつじ荘」の前で降り、山道を10分ほど歩いて浜に到着することになります。ここに、天日塩の製塩プラントも見えます。このつり公園は町営で、固定桟橋、つり筏、磯つり場とあり、その上、5月から11月ころまでは鯛の釣り堀も楽しめます。夏によく釣れるのは、鯛、メバル、ベラ、ハネ、スズキ、カサゴ、アコウ、ヒラメ、ボラなどで、昨年は鯛を今年はヒラメを放流したので、こうした魚もよくかかるとか。ここで釣れた大物の写真や魚拓もあって、期待が高まります。手ぶらで行っても貸し釣り竿やエサの用意もあるとのことで、旅人も気軽に釣りを楽しめます。
ここで、最近人気があるのが土日祝日(5月~10月)限定のランチメニュー「鯛のお刺身定食」。プリプリ新鮮な鯛のお刺身がたっぷりついて、とってもリーズナブル(2010年6月現在1000円)。数に限りがあるので予約がおすすめ。また自分が釣った鯛もその場で料理(有料)してもらえるとのことでした。

また、有名なのが「鯛の浜焼き」。釣ったばかりの鯛をワラで巻き、粗塩に海水を加えた鍋で豪快に蒸し焼きにします。絶妙の塩加減、やわらかくほんのり甘い鯛の白身を味わえます。この鯛の浜焼きは、お土産や贈答品としても送られていますので、直島のごちそうを遠くでも味わうことが可能です。
訪れた日は平日で、ベンチでのんびり座る人影が・・。よく見ると海草の手入れをしています。お話しを伺えば、浜で採ったテングサのゴミをのける作業中で、これでトコロテンができるとのこと。つり公園や海の駅でトコロテンのレシピを付けて土産物として売られています。また直島の海岸で7月8月に採れるのは「いぎす」と呼ばれる海草。こちらは酢味噌で食べる郷土料理になるそうですが、最近はほとんど作られなくなってしまったそうです。

直島つり公園 休園 火曜日(祝日の場合は翌日)・年末年始
7時~18時(冬季は17時まで)水金土は夜釣りも可能。
電話 087-892-2891

安全管理を徹底「なおしまハマチ」

もちろん、直島は漁業が盛んなところ、つり公園で釣れるような多様な魚が水揚げされています。また養殖も盛んで、海苔養殖のほかにカンパチ、ヒラマサ、タイ、スズキ、ヒラメ、トラフグなどが育てられています。そして、今脚光を浴びているのが「ハマチの養殖」。消費者の皆さんに安全でおいしいハマチを安心して食べていただくため、厳しい養殖マニュアルを作成し、検体検査などを行っています。また、出荷されたハマチが、いつ誰がどのように養殖したのかを分かるように育成履歴を商品履歴書として開示しているのです。このように徹底した安全管理で、人気が高まる直島漁協の「なおしまハマチ」です。

直島漁業協同組合 電話 087-892-2244

アートな想い出「ベネッセハウス」」

今回の瀬戸内国際芸術祭で、最も注目度が高いと言ってもよいのが「ベネッセアートサイト直島」。直島の素朴な自然の中に、現代アートや有名建築家の建物が点在し、どこにもない特別の場所が誕生しました。中核施設の「ベネッセハウス」は、安藤忠雄氏の設計で美術館とホテルの機能が複合した施設。館内だけではなく、庭にも海岸にも現代アートの作品が点在し、不思議な空気感を漂わせています。そこには、宿泊客のみならず利用できるレストラン(「ミュージアムレストラン日本料理一扇」「テラスレストラン」)やカフェ(ミュージアムカフェ)、スパ、ショップなども点在しています。
その中からパーク棟に併設された「ベネッセハウスショップ」を訪ねてみました。ここには、直島での展覧会カタログ、ロゴ入りのホテルグッズ、レストランのオリジナル商品やデザインを重視したアート関連のグッズなどが並んでいます。そして、この夏の一押しは、ベネッセ創業55周年を記念して作られた日比野克彦氏デザインのTシャツ。男性用、女性用、子どもさん用もありご家族でのコーディネートもOK、おしゃれな直島限定BOXに入っています(数量限定)。ベネッセハウスレストランこだわりのドレッシングは、瀬戸内で有機栽培された柑橘果汁がたっぷり入った健康志向のノンオイルタイプ(数量限定)。また小豆島のオリーブも使われているオリジナルのオリーブオイルは、あっさりした風味でパンにそのままつけて楽しめます。
小さな美術品のような和のスイーツ「かしこ」は、泡雪のようなお砂糖「和三盆」を素材に、古い御菓子司の蔵で静かに眠っていた江戸時代の木型を使って誕生しました。見た目は、直島の浜の想い出の貝殻そのもの。でも、口に含むと、ミネラルを含んだ極上の甘さ、最高の口溶けの良さを味わうことができます。

ベネッセハウス 電話 087-892-2030

充実するアートサイト「地中美術館」から本村へ

島の南側の小高い丘には安藤忠雄氏設計による「地中美術館」があります。ここには、クロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルによる作品が建築空間と融合し、巨大なアート作品として存在しています。こちらの地中ストアでは、オリジナルアートグッズや地中茶、クッキー、ジャムなどが置かれています。

地中美術館 電話 087-892-3755

地中美術館とベネッセハウス・ミュージアムの中間点に6月15日、韓国現代美術家・李禹煥(リ ウファン)氏の美術館がオープンしました。これに合わせ、町営バスの路線と運行ダイヤが改正され、つつじ荘からはベネッセの無料シャトルバスが、テラスレストラン、ベネッセハウス・ミュージアム、李禹煥美術館、地中美術館を往復します(瀬戸内国際芸術祭期間中は原則的に1日16便、土日や8~9月はおおよそ15分間隔での運行予定)。では、つつじ荘前から町営バスに乗って、次は本村に向かいます。そこには懐かしの家並みや常設のアートプロジェクト「家プロジェクト」が待っています。

■プルタブのけたら・・・

続いては本村「農協前」でバスを降り、周辺を散策します。この本村一帯には、最近、次々とおしゃれなカフェやショップが誕生しています。
その中からまず訪ねてみたのは、バス停のすぐ近くの路地にある「よいち座」。ここは、なんと空き缶アートのショップ。あの空き缶から、こんな粋な人形ができるのかとしばし見入ってしまいます。お店の名前は、昔、ご先祖の與市左衛門さんが芝居の一座を持っていて、その名前が「よいち座」といい、それが屋号として代々伝わっているのだそうです。そういえば、本村の家々には屋号があり、屋号のマップまであります。最初は足がなかった人形も最近、にょきっと足が伸び、ますますスマートになりました。お客様の声で帽子がグレードアップしたり、店先の会話の中から、どんどん進化する人形たち。ご主人いわく「チャリティーのためのプルタブを集めていて、のけた表面を見たら顔が浮かんできた」とか。ちょっとしたお店の飾りにと思っていたら、周囲に進められてお土産物になったのだそうです。島の人々に愛される空き缶の人形。あなたも仲良くなってみませんか。

個性的な民宿やカフェ

農協前のバス停から東へ30㍍左側にあるのが民宿「石井商店」とその食堂。築百数十年を超える古民家が民宿本家。こちらはペットも一緒に止まれます。また自炊の出来る棟もあり、お昼にはうどんなどが味わえる食堂もオープンします。

石井商店 電話 087-892-2480

バス停の前の道を石井商店を背に進むと、やがて「茶寮おおみやけ」の立派な門の前に到着。ここは、天領時代には、庄屋であり、倉敷代官に仕える村の役所でした。長屋門と主屋は文化庁登録有形文化財で、現在はカフェ・レストランに改装されています。また、ここは主屋の座敷やゲストハウスに宿泊することもできます。

茶寮おおみやけ 電話 087-892-2328

現在直島には、本村や宮浦、積浦などに民宿など約22件の宿泊施設があります。直島観光協会のホームページ「素顔の直島」に一覧がありますので、ご活用ください。

世界のデザイナーうちわ

この本村に今年オープンしたショップの一つが「丸亀うちわ屋」。隣には「カフェまるや」があり、赤いうちわの看板が路地にのぞいています。香川県うちわ協同組合連合会のアンテナショップで、色とりどりのうちわがずらり。海外のお客様にも興味深い”うちわ”。有名デザイナーのうちわも飾られ、週末には職人さんの実演があり、また日曜日には白地のうちわに似顔絵を描くアーチストが来店。わたし専用のうちわができあがります。

丸亀うちわ屋 電話 087-892-3818/月曜定休

ガラスの魔術師

今度は本村の中心地から少し離れた場所にある「グラス・チャーマー」を訪れます。この店の名は「ガラスの魔術師」という意味、店内のケースの中には美しいトンボ玉が並べられていました。予約をすればガラス工芸体験も可能です。また、ここは隠れ家的なカフェで、予約をすれば自家栽培の新鮮野菜を使ったランチや夕食、お弁当も30食までなら用意してくれます。手作りクッキーもサクサクで美味。おやつにおすすめです。

グラス・チャーマー 電話087-892-4317

黄金の生まれる島・エコアイランドなおしま

永く製錬の島と呼ばれてきた直島。1917年に三菱合資会社により三菱の中央製錬所として「直島製錬所」が設立され、銅の製造が始まりました。100年近くの歴史がある銅製錬は、今では環境にやさしい画期的な独自技術の連続製銅法を導入し、大幅な省エネルギー化も実現しています。また、2004年には有価金属リサイクル施設の操業を開始。スクラップなどから金属を回収し、銅製錬の原料として再利用しています。さらに、銅製造の工程で出てくるスライムからは金、銀、白金などが回収されています。金、銀は純度99.99%以上の地金になり、電子産業や宝飾品などに広く用いられます。今や直島は、黄金を産出する島としても注目されているのです。”PLANTツアー”及び”エコツアー”では、この工場施設を見学することもできます。

三菱マテリアル(株)直島製錬所の敷地内には「香川県直島環境センター」があり、豊島から運ばれてきた廃棄物や島内の一般廃棄物が焼却・溶融処理され、そこで発生する副成物は再資源化され、完全循環型のシステムが実現されています。例えば、溶融スラグは安全検査と品質検査が実施され、コンクリート用の骨材として香川県の公共事業などで有効活用されています。この環境センターは見学が可能で、パネルや回転式表面溶融炉のミニチュア模型などで分かりやすく廃棄物処理の現場を学ぶことができます。また、そのスラグを使って陶芸体験ができる「なおしまスラグ陶芸体験工房」が宮浦港の近くにあり、土ひねりや絵付けなどのコースが実施されています。

直島製錬所工場見学、センターの見学、スラグ陶芸体験など、問い合わせは NPO法人直島町観光協会 電話087-892-2299

007も直島にやってくる?

映画でもすっかりおなじみ”007″。この小説の「赤い刺青の男」には、直島が実名で登場します。そこでこの物語の映画化と直島ロケを願って誕生したのが「007赤い刺青の男記念館」。隣接する「璃園(RIEN)」は、手作り品の雑貨がいろいろ並ぶ喫茶店。コーヒーは豆から挽くこだわりよう。ご主人は長年、紙粘土の人形を作成してきたキャリアがあり、店内には可憐な人形作品も飾られています。

璃園 電話 087-892-3968