第67回 おいり
梶 剛(かじつよし)
NSC大阪校22期生
2005年ムーディ勝山と“勝山梶”結成
2008年ABCお笑い新人グランプリ新人賞
2010年ピン芸人“梶剛”として活動
出身地:香川県三豊市 1981年3月28日生まれ
香川県の西の地域の伝統のお菓子「おいり」。
花嫁さんが嫁入りのときにご近所に配ることから幸せのお菓子と言われています。
三豊市のおいり専門店の山下おいり本舗にやってきました。
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“おいり”は嫁入り道具のひとつ
「うわ~、きれいな色ですね」
ピンクや黄色、黄緑に水色とカラフルな色に染められた“おいり”に魅了される梶さん。
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「昔から香川県の西の地域では、お嫁さんが嫁ぐときに“おいり”を持ってきて近所に配るという風習があります。結婚のときには欠かせない嫁入り道具のひとつなんです」と山下おいり本舗の山下さんが教えてくれました。
「幸せをご近所におすそ分けするから“幸せのお菓子”と呼ばれているんですね」と梶さんも納得の様子。
山下さんは19歳から“おいり”を作り続けて、おいり一筋60年。繊細なお菓子で、毎日作っていても出来具合が違い「日々研究」なのだそう。作っているところを見学させてもらいました。 -
シンプルな材料だからこそ手間暇をかけることが大事
“おいり”の材料は「もち米」「水あめ」「砂糖」とシンプル。
まず、蒸したもち米を石臼に入れて杵でついて餅を作ります。 -
のばした餅は晴れた日は天日で、雨の日は室内で干して乾燥させます。
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餅が乾いたら5mm角のさいの目に切ります。その細かさに梶さんはびっくり。
「このときに形が崩れているものを取り除いて、大きさを揃えておくことがきれいな“おいり”を作るコツ」と山下さん。粒が揃ったきれいな“おいり”は手間暇をかけることによって生み出されていることを知りました。 -
「おいりって丸いのに四角から作られるなんて驚きですね」と梶さん。
「この角が取れて丸くなりますよ。これもまた、幸せのお菓子といわれるゆえんなんですよ」 -
火で煎る「いり」とお嫁入りの「いり」で「おいり」
さいの目に切った餅を火で煎ります。
煎る時間は乾燥具合で違いますが、およそ1分。焦げ目が付かないように、山下さんは、じっと釜に集中します。
「火で煎る“いり”とお嫁入りの“いり”をかけて“おいり”になったと言われているんですよ」と山下さんが“おいり”の名前の由来を教えてくれました。
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釜から取り出した餅はまんまるにふくらんで、まるで真珠のようです。
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いよいよ仕上げの色かけ。
むらが出ないように回しながら“おいり”を色付けしていきます。上品な甘さとほんのりとニッキの香りも加わりました。
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“おいり”はもともと5色ですが、山下さんはお嫁さんの幸せを願って7色の虹色に色付けしています。
「おいりがきれいだとお嫁さんもきれいだと言われています。この風習が全国にも広がっています。お嫁入りのほか、色々なイベントにも使われるようになりました」
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はじめて“おいり”に出会った人にも感動してもらえるように、きれいに作ってあげたいと山下さんは思いを語ってくれました。
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“おいり”を食べてふるさとを思い出してほしい
作り方を見学したところで、梶さんは“おいり”を試食。数粒をいっぺんに口の中に入れるのが香川流の食べ方だと山下さんが教えてくれました。
「ふわ~って口の中で溶けますね」と梶さん。口溶けの後には、ほのかな甘みが広がります。
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山下さんは全国にはない地元ならではのお菓子を作りたいと、おいり専門店として工夫を凝らしてきました。
雑誌やテレビで全国的にも知られるようになり、香川県外からも注文が来ています。ソフトクリームにかけたりと、若い世代にはインスタ映えすると話題。
「“おいり”を食べて、ふるさとを思い出してほしい」と山下さん。これからも心を込めて丁寧に作っていきたいと笑顔で話してくれました。
「山下さんの“おいり”で幸せが広がっていきますね」山下さんの思いに心が温まった梶さんでした。