第79回 保多織(ぼたおり)
梶 剛(かじつよし)
NSC大阪校22期生
2005年ムーディ勝山と“勝山梶”結成
2008年ABCお笑い新人グランプリ新人賞
2010年ピン芸人“梶剛”として活動
出身地:香川県三豊市 1981年3月28日生まれ
保多織(ぼたおり)は香川県の伝統的工芸品で、肌ざわりと着心地のよさで多くの人に愛用されています。梶さんは保多織の唯一の生産者・岩部保多織本舗(いわぶぼたおりほんぽ)を訪れました。
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保多織とはどんな織物?
お店に入ると色とりどりの服や小物が目に飛び込んできました。使われている生地は表面に凹凸のある独特の風合いをしています。
「このでこぼこが保多織の特徴で、とても気持ちがいいんですよ」と4代目社長・岩部卓雄(いわぶたかお)さんが教えてくれました。 -
「シーツなどの製品は機械で織っていますが、特殊な商品は今も手織り機で織っているんですよ」視線の先には、赤・黃・緑の鮮やかな糸がかけられている手織り機がありました。
「保多織はどんな風に織っているんですか?」肌ざわりのよさに感動した梶さんは、織り方にも興味津々。 -
「ちょっと織ってみましょうか」と岩部さんが手織り機の前に座り、すっと横糸と数回行き来させました。保多織は、織物の基本的な織り方である「平織(ひらおり)」に一工夫を加えることで、風合いを生み出しています。
平織とは、縦糸と横糸を1本ずつ交差させる織り方です。ワイシャツなどに使われる織り方で、目が細かく均一で丈夫な生地になります。 -
保多織は、この平織の織り方で横糸を3回通し、4回目に糸を浮かせることで、ワッフルのような凹凸が生まれるのです。風合いがありながら平織の丈夫さも兼ね備えた保多織。長く丈夫に保つことから、縁起のよい「保多織」という名前が付けられました。
※写真の手前の織りが平織、奥の織りが保多織 -
夏は涼しく冬は暖かい保多織
「表面のでこぼこのおかげで、肌ざわりがさらっとしますね」と梶さんは保多織に触れてみて、肌ざわりのよさを実感。
「でこぼこが生地と肌の間に空間を作り、夏はさらりと涼しいんですよ。汗を吸っても早く乾いてくれます」と岩部さん。高温になる夏の車内でもさらっとした着心地を保ってくれるのだそう。冬は冬で肌にぴたっとくっつかないため、生地の冷たさを感じにくいという特徴があります。
「夏は涼しくて冬は暖かい。保多織は一年を通して着心地がいいんですね」と梶さんもうなずいていました。 -
明治時代に保多織を引き継いだ岩部家
保多織は、江戸時代の1689年(元禄2年)に誕生。高松藩主が京都から織物師の北川伊兵衛常吉(きたがわいへい つねきち)を招いて作らせました。当時は高松藩御用達の絹織物で、幕府への献上品として使われていた高級品。上級武士しか着ることができませんでした。
明治時代になり、北川家と親戚関係にあった岩部家が技法を引き継ぎ、今にいたります。岩部保多織本舗の初代が絹糸から綿糸で織るようになり、一般の人々も着られるようになりました。 -
生活スタイルが変化する中で、長く続いている保多織。その秘訣は、岩部家の初代がシーツやハンカチなどの日用品にいち早く転向してきたから。
「保多織は、織り方に決まりはありますが、絹糸、綿糸の決まりはなく、また糸の太さや柄にも決まりはありません」
そのおおらかさが時代にあった柄や、用途にあわせた生地の製作につながり、今日まで保多織を守ることができた理由の一つだと岩部さんは考えています。
「本当によいものだからこそ、今の時代に使いやすく対応してきたんですね」と梶さんも時代とともに変化する保多織に思いを馳せていました。 -
岩部さんおすすめの保多織
イチオシの保多織はシーツ。一度使ったら他のものは使えないほど、肌ざわりのよさを実感できると岩部さんも太鼓判を押します。また、女性にはブラウスやジャケット、男性にはシャツも好まれています。柔らかな着心地とアイロンをかけなくても自然に着こなせることが人気の理由です。
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色々な製品を見ているうちに梶さんも着心地を試してみたくなってきました。
「梶さんはぜひ作務衣(さむえ)を羽織ってみてください」
岩部さんにすすめられて、梶さんは作務衣を試着してみることにしました。 -
身につけてこそ本当のよさが分かる
濃いグレー色の作務衣がしっくりとなじんでいる梶さん。
着心地はというと「生地はしっかりしているから重いかなと思っていたけど、着ると想像していたよりずっと軽くて柔らかい。実際に身につけると、保多織の本当のよさが分かりますね」と想像以上の着心地に驚いていました。 -
実際に手に取ってこそ、感じられる保多織の魅力があります。
岩部さんは、これからも全国の百貨店の催事に出展して、多くの人に保多織の魅力を伝えていきたいと語ってくれました。